8月例会感想

  • 2012.08.15 Wednesday
  • 13:28

 【原・記】

予定していた『天の川』昭和11年11月号の読みは延期。
『京大俳句』昭和11年12月号1冊だけを読みましたが、それでも時間が足りず後半は駆け足気味。
まとめてくださった羽田野令さんによると、今号のところどころに『馬酔木』と秋桜子への批判がみられたとのことでしたが、秋桜子はこの年の3〜12月、「無季俳句を排す」を発表中。
創刊時にはあたたかなエールをくれた秋桜子とも、ずいぶん距離が。

私が今号で面白く読んだのは、橋口尖太郎「口語俳句作品」。
橋口尖太郎は藤後左右のペンネーム。左右といえば「京大俳句」創刊時に「牛の貌チブス患者の夢にくる」や「横町をふさいでくるよ外套着て」などを発表し、戦後も超個性的な口語俳句を詠みました。
週刊俳句 Haiku Weekly で関悦史さんが藤後左右全句集について詳しく書いておられます)

さて、左右の文章によれば「本年に入つてからの口語俳句の実践は特に著しいものがあつた」。
なかでも「旗艦」と「句と評論」に多くの口語俳句が発表されていたようです。
ただ、悲観すべき作品がほとんどで「わづかな輝きのある作品を探し得て喜びとした」とのこと。

引用されていたのは、
「風鈴にこゝろをさなくなつてゐる」
「心臓がつかれてたてない月夜です」
「夏深しバツトの函が青すぎる」など(いずれも「旗艦」)。
しかし、どれもあまり評価は高くなく、季感のとりあつかい方や句のなりたちが従来の有季俳句の粋を出ないことや、文語と口語の混同がみられることなど、問題点が指摘されていました。
これまでの俳句と同じように作って、それを口語にしただけでは足りないということですね。
口語も文語も有季も無季も、あまり深い考えなく詠む自分にとっては、耳が痛い…。

金田廉子という人の「秋夜曲」という連作も紹介されています。これは出典が書いていないのですが、「句と評論」に発表されていたものでしょうか。

戸を閉ぢてねてゐる外は月夜です
私はねてゐるし虫はおきてます
私は闇です虫は真昼です
月光をあびてこほろぎ啼いてるし
  私は
目をとぢて夜の地球に乗つてゐる
左右は、二節をつなぐのではなく、一句の終りとしての「し」の使い方が面白いと。
しかし、連作だからか俳句というより口語自由詩みたいですね。好きですけど。

今号の京大俳句誌では、会員集にはほとんど口語句はみられませんでしたが、
投句欄の「三角点」には、けっこうありました。
「赤い陽とオゾンが弄る裸形です 仁科海之介」
「天井に押しつけられて痩せてゐる 中内草男」
「兄の負傷怒つた父が草鞋はく 有吉峰水」
「ガソリンの青き匂ひを嗅ぎに出る 仁智栄坊」など。

そのほか、気になったものは上島泉の「田園と新興俳句」。
「然るに今日新興俳陣を横行する新興田園俳句と自称するものは…」とあるので、新興田園俳句という俳句があったようです。
「新聞が一度、東北地方の冷害飢饉を報ずるや大都会の塵埃の中から「東北飢餓の歌」を生産する時代であり、その取材する所は、新聞紙の報道に飽くまで忠実である」
このような批判は、このあとの戦火想望俳句の時にもあったし、おそらく震災を詠んだ俳句にもあったことと思います。
それはともかく、近代化した都市生活を詠むにふさわしい形式として発展してきた新興俳句が、田舎の生活をどう詠んでいたのか。この文章には作品の引用がないのですが、
同年7月号で波止影夫が「田園生活俳句のために」のなかで、具体的に句をあげています。

 貧農
炉火を守る父の眼光何をにくむ
炉火乏しこのひもじさを誰につげむ
 農閑期
雪降れば売りし娘のこと妻は泣きぬ
などの句を示し、「単なる通有性が存在するだけであり」、「形式と内容のギャップが全く不用意に無視されている」と指摘しています(引用されている句は「馬酔木」のものですが、これに似た俳句は「京大俳句」にもよく出てきたように思う)。
つづいいて「ホトトギス」の中田みづほの作品で、
凶作の蜷も田螺も腹がたつ
凶作の通る坊主も腹が立つ
をあげ、「これ等の句には少なくとも形式と内容のギャップがない」「農村的単純さが効果的である」としています。
飢餓にしても戦争にしても新聞記事で俳句を詠むという態度はどうか、ということでなく、「形式と内容のギャップ」という点をよく覚えておこうと思いました。

そのほかにも、井上白文地がミヤコホテル論争について触れた文章や、座談会、昭和11年のまとめなど、盛りだくさんの1冊でした。

あとは、新谷さんがコピーを用意してくださった「俳句史研究の資料について」(櫻井武次郎)。
「読む会」では、資料の収集や調査なども引き続きやっていきたいと思っているのですが、
ちかごろ滞っております。うーん。

また、資料の話もここで色々と書いていけたらと思っています。



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